「novel:小説」カテゴリーアーカイブ

筒井康隆先生が小説のお約束を排して挑んだ長編:『虚人たち』読了

筒井康隆先生の長編『虚人たち』を読了。

タイトルは長く承知していて、

サイン本入手機会、最後の一冊に滑り込み購入

サイン本入手機会に遭遇し、手元に引き寄せていた経緯。

お約束無しで繰り広げられるストーリー

購入前にチェックしたamanonでの本書の紹介で

>同時に、しかも別々に誘拐された美貌の妻と娘の悲鳴がはる >かに聞こえる。自らが小説の登場人物であることを意識し  >つつ、主人公は必死の捜索に出るが…。小説形式からのその >恐ろしいまでの“自由”に、現実の制約は蒼ざめ、読者さえも >立ちすくむ前人未踏の話題作。泉鏡花賞受賞。

とあり、作品への興味を深めていましたが、実験的であるがゆえ頭の中でストーリーの中の情景を描いてくことが「難しかったなぁ」と。

” 妻と娘が誘拐されました。今電話をしているこのわたしは彼女たちの夫であり父である人間です。念の為に言いますと妻の夫であり娘の父です。

彼女たちがわたしの眼の前で誘拐されたのではないにかかわらず二人が誘拐されたのではないにかかわらず二人が誘拐されたことは疑いのない事実であり別べつの犯人によって誘拐されたこともまた確かなのです。”(p39)

という事件を端緒として

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筒井康隆先生の変幻自在な奇想とドタバタが刺激的なショートショート集:『人類よさらば』読了

筒井康隆先生のショートショート集『人類よさらば』を読了。

(2022年)1月に発売され、「サイン本出たら」と思っていたところその機会に恵まれ

入手叶っていた経緯。

日の目を見るべく選書された短編集

本書には37篇の短編が収録され、SF・ミステリ評論家、フリー編集者 日下三蔵さんによる巻末の「編者解説」によると

” 「出版芸術社 << 筒井康隆コレクション>> などの再編集本に初めて収録された作品 」「既刊の単行本または全集に収録され、文庫化されずに再編集本に入った作品」「これまで一度も本になったことのない作品」を対象にしている。

・・中略・・

本書には、コレクションに入っているが一度も文庫化されたことのない二十五篇を、すべて収めた。

コレクションには、エッセイや関連する資料も大量に収めたので、将来的に無価値になることはないと思っているが、少なくとも小説作品に関しては、手軽な文庫本で読めるようにしておくべきだろう、と考えたからである。”(p299/p304)

との意図に沿って編集されたもので、

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伊東潤さんが描いた気骨ある大隈重信の生きざま:『威風堂々(上) ー 幕末佐賀風雲録』読了

作家 伊東潤さんの『威風堂々 (上)ー 幕末佐賀風雲録』を読了。

サイン本入荷情報に↓

出典:紀伊國屋書店 新宿本店Twitter(画像はTweetにリンク)

即反応しての2022年購入の1冊目。

本書は、上・下巻に分かれ、上巻には

 プロローグ

 第一章 気宇壮大

 第二章 意気軒昂

 第三章 疾風怒濤

 第四章 百折不撓

の章立てで、物語の主 大隈重信(八太郎)について

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佐藤究さんが京都を舞台に描いた未知の厄災:『Ank:a mirroring ape』読了

小説家 佐藤究さんの『Ank:a mirroring ape』を読了。

「難しかったなぁ〜」というのが、中途から読了に至るまでに感じていたことですが、

本書のあらすじを背表紙から拾うと・・

” 二〇二六年、京都で大暴動が起きる。京都暴動 ー 人種国籍を超えて目の前の他人を襲う悪夢。

原因はウイルス、化学物質、テロでもなく、一頭のチンパンジーだった。

未知の災厄に立ち向かう霊長類研究者・鈴木望が見た真実とは・・・。”

というもの。

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ジョン・ウォーターズ監督が描いた最高、最悪、そして現実のヒッチハイク旅行記:『ジョン・ウォーターズ地獄のアメリカ横断ヒッチハイク』読了

先週、読み始め記をアップロードした ↓

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『ジョン・ウォーターズの地獄のアメリカ横断ヒッチハイク』を読了。

その後、読み進めた

 起こりうるかぎり最悪のこと

 本物の旅

で、「最悪の旅」が夢想された「起こりうるかぎり最悪のこと」は、最初の「起こりうるかぎり最高のこと」でガツン!とやられていた分、感覚的な慣れは芽生えていたものの生々しい描写などジョン・ウォーターズの世界観を色濃く改めて。

ハイライトは「実際、どうだったのか?」という「本物の旅」で、それまでの「最高の旅」「最悪の旅」とは大きくトーンが異なり、

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ジョン・ウォーターズ監督が描いた最高、最悪、そして現実のヒッチハイク旅行記:『ジョン・ウォーターズ地獄のアメリカ横断ヒッチハイク』読み始め

カルト映画の世界で名が馳せたジョン・ウォーターズ監督の『ジョン・ウォーターズ地獄のアメリカ横断ヒッチハイク』を読み始めてから

 プロローグ 我が道を行く?

 起こりうるかぎり最高のこと

 起こりうるかぎり最悪のこと

 本物の旅

と、章立てされているうちの「起こりうるかぎり最高のこと」まで読み終えたので、そこまでのおさらい。

購入のきっかけはサイン本販売情報

本書のサイン本( by 訳者 柳下毅一郎さん)販売情報を見つけ、「どんな内容だろう」と関心を抱けば・・

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筒井康隆先生が向けた矛先の鋭さ、先見性が刺激的な短篇集『堕地獄仏法/公共伏魔殿』読了

帯に

「蠱毒の小説集」

と刺激的なコピーが踊る筒井康隆先生の『堕地獄仏法/公共伏魔殿』を読了。

本書には16の短篇が収録されており、

本書目次

前半は「これ読んだな」というのが多いなと感じ、巻末の日下三蔵さんの「編者解説」によると

” 現在品切れになっているとはいえ、九篇収録の『ベトナム観光公社』から六篇も採ってしまったことは気になっていた。

古本で探すにしても、九篇中三篇しか未読作品のない本を、読者に買わせることになってしまうのは本意ではない。

そこで『東海道戦争』『ベトナム観光公社』『アルファルファ作戦』の文庫版に収録されている二十七篇から、ハヤカワ文庫版に採らなかった十六篇を一冊にまとめたのが、この本なのである。”(p456)

というセレクションで、昨年(2021年)末に『東海道戦争』↙️

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佐藤究さんが描いた震撼させられし闇の向こう側:『QJKJQ』読了

小説家 佐藤究さんの『QJKJQ』を読了。

昨年(2021年)↓で

<< 2021年12月19日投稿:画像は記事にリンク >> 佐藤究さんが描いた果てしなく深淵なる闇:『テスカポリトカ』読了

直木賞受賞した佐藤究さんですが、本作(『QJKJQ』)では2016年に江戸川乱歩賞を受賞。

『テスカポリトカ』で佐藤究さんの世界観に触れて以降、作品に向き合う前( ↓の時など)には

<< 2022年1月4日投稿:画像は記事にリンク >> 佐藤究さんが描いた暗黒に堕ち疾走した男の軌跡:『サージウスの死神』読了

相応な覚悟のようなものを感じていますが、本書(『QJKJQ』)のあらすじを裏表紙から転記すると

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