野球解説者、アマチュアでは指導者としても活躍されている宮本慎也さんの『プロ視点の野球観戦術 戦略、攻撃、守備の新常識』読了。
書店に立ち寄った際、

サイン本を見つけ、即反応していた経緯。
本書は、宮本慎也さんの
” これまで疑問に思っていた日本の野球事情を環境の変化と照らし合わせ、メジャーとどう違うのかを考えました。これまでの「常識」を疑い、新しい視点で野球を観る ー その試みの集大成として、本書『プロ視点の野球観戦術 ー 戦略、攻撃、守備の新常識』を執筆しました。私なりに考えた野球の『新常識』を紹介してみたいと思います。”(はじめに)
との思いから上梓に至った著書で、
第1章 勝利への新常識
第2章 戦略の新常識
第3章 攻撃野球の新常識
第4章 打撃の新常識
第5章 守備の新常識
の章立てに沿って新常識が次々と示されていきます。
どのような内容かというと、
” 今では送りバントをしない方が、得点確率が上がることをご存じの方が多いでしょう。近年の3年間を平均すると、犠打をした場合の得点確率38.5%に対し、しなかった場合の得点確率は59.9%。約20%の違いがあります。”(p29)
と数年前から指摘され始めていたことの改めてに、
” セ・リーグのこの10年間の1点差ゲームで最高勝率だったチームの優勝は、22年の東京ヤクルトスワローズ、23年の阪神の2回だけです。
・・中略・・
接戦に強いチームより、3点差以上、5点差以上の大勝をするチームの方が優勝する可能性が大きくなるということです。”(p22/28)
という 接戦に強い=ペナントレースを制す の刷り込みの覆し(⇨ 「大差をつけて楽に勝つ」)や
” 2024年のシーズンで規定打席に達した打者で3割を超えたのは、セ・リーグでDeNAのタイラー・オースティン選手(3割1分6厘)ヤクルトのドミンゴ・サンタナ選手(3割1分5厘)、パ・リーグではソフトバンクの近藤選手(3割1分4厘)だけです。
・・中略・・
OPSは馴染みのない数値だけに、まだピンとこないという人もいるでしょう。直近の5年間での、日本プロ野球の平均打率を平均OPSを並べてみます。
この5年間を平均すると、OPSが.677、打率が2割4分5厘となります。単打ばかりの打者が3打数1安打しても、OPSだと.667なのですから、プロ野球の打者としてはほぼ平均的な打者ということです。
一方、二塁打で4打数1安打の打者は打率2割5分で、プロ野球界だと平均的な打者です。しかしOPSになると.750で、平均を大きく上回っています。
球界に3人しかいない3割打者といっても、単打ばかりの打者は、それほどの価値はないということです。”(p80-82 括弧書きは省略 / 註 OPS =「出塁率+長打率」で計算 )
と野球場で攻撃時、選手名と共に表示されることが一般的な打率が持つ実際の重要度に、或いは
” これは統計にも出ているように、ゴロよりもフライの方がヒット率は高く、さらに長打になると、その差は歴然と開きます。
ゴロでホームランになるのは、ランニングホームランだけです。長打になるのも、一塁線か三塁線を破ったときがほとんどだと思います。
投手をやってきた人は一度くらい「ゴロを打たせていけ」と言われたことがあるでしょう。「低めに投げろ」というのも打者に打球を上げさせないようにするための指導です。
それなのに日本では打者に「上から叩きつけてゴロを打て!」と指導する人がいます。そういう指導者は「ゴロは内野手が捕って送球して、また捕球しなければアウトにならない。3度もミスをする可能性がある。でもフライは捕ったらアウト。1度のプレーで済んでしまうから、ミスをする確率は低い」と説明します。
こんな指導をするチームには行かない方がいいでしょう。”(p97)
といった具合。

指摘の一つ一つがデータを土台に論が展開され、新常識に納得させられる流れに見事乗せられ、宮本慎也さんがプロ野球中継にYouTubeで重宝されることも(改めて)よく理解出来ました。