石毛宏典さんの溢れる野球愛が爽快だった『石毛宏典の「独立リーグ」奮闘記』読了

現役選手時代(当時の球団名)西武ライオンズの黄金時代を牽引され、引退後は四国アイランドリーグ創設など、

各地で独立リーグ普及に尽力されてきた石毛宏典さんの『石毛宏典の「独立リーグ」奮闘記』を読了。

野球人 石毛宏典の軌跡

タイトルだけ読むと「独立リーグ」に焦点あてられた著書かと思いきや

巻末の「エピローグ  野球の未来図を描く」に

” この本は独立リーグの話が中心ではあるが、私自身の自叙伝にもなっており、私がどのような野球人生を歩み、どのような経緯で独立リーグを立ち上げたかがわかるものになっていると思う。”(p246)

とある通り、

 第一部 アマチュア野球時代 少年野球から社会人野球まで

 第二部 プロ野球時代 選手、コーチ留学、監督

 第三部 独立リーグ創設 四国アイランドリーグから、関西独立リーグ設立まで

 第四部 野球の未来に向けて 子どもたちの育成と、より地域に密着した球団へ

という目次に沿って、本が出版された2009年時点の石毛宏典さんの半生記といった内容になっています。

先日参加した「日本プロ野球 OBクラブ25周年記念 ファンとの集い」で本書にサインを頂戴しようかと思えば、既に購入本にサイン(+落款)されていた奇跡 ^o^

「野球」に選ばれし才能

幼少の頃は、

” 学校から帰ると家の野良仕事を手伝わされるから、帰りたくなかった。

苦労しているおふくろの顔を見なきゃいけないことも、帰りたくない理由の一つだった。

そのため中学に入ると、放課後にいろんなクラブ活動を見て、一番帰りが遅かったのが野球部だったから、野球部に入った。”(p15)

ときっかけから、資質を認められ進学した駒澤大学を含め複数の大学から声がかかった際、ご両親が

” 長男坊が大学に行ってないのに、次男坊を行かせるわけには行かない。帰ってくれ」と断っていた。

それでも三度も四度も東京からわざわざ来て、「ぜひうちに息子さんを」というので、ぐれてうちにもよりつかなかった兄貴が、最後に同席することになった。

兄貴が「先生よ、こいつそんなにセンスあんのか?」と言うので、「ある」と言うと、「わかった。おやじ、俺が働くから、こいつを大学行かせてくれ」と言う。

「それでいいんか?」「いい」となった。”(p20-21)

と、薄氷を踏むような過程を経てのプロ野球選手への道。

溢れ出る野球愛

そこから(当時をリアルタイムで知る)プロ野球ファンなら誰もが知る西武ライオンズでの活躍を経て、

プロ野球界(NPB)を震撼させた1リーグ構想から、プロ野球界の将来を危惧し、周囲の冷ややかな反応を意に介することなく、

本書の中心部分となる独立リーグ創設へ行動を起こし、時に

” とうとう疲労も極致に来ていたのか、高速道路のジャンクションで居眠り事故を起こしてしまった。

車はかなり大破し、それを見て「よく死ななかったな」と思ったが、”(p181)

という文字通り九死に一生を得ながら、

” 私は、「標なき道」とでも言おうか、道なき道、そんなものを歩むのも結構面白いもんだと思っている。

道路標識があり、信号があれば守られるし、敷かれているレールの上を歩けばもっと安心だ。

・・中略・・

先がどうなるかわからないということでいえば、私の用に好きなことで「標なき道」を歩むというのも案外楽しいものかもしれないと思うのだ。”(p242-243)

という独立リーグ立ち上げの日々を綴った資料的な貴重さもさることながら、石毛宏典さんの野球愛溢れる生きざまが読み手に爽快さを届けてくれる一冊でありました ^^


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