伊勢角屋麦酒 鈴木成宗社長の熱い生きざまに鼓舞された:『発酵野郎! 世界一のビールを野生酵母でつくる』読了

伊勢角屋麦酒 代表取締役 鈴木成宗さんの著書『発酵野郎!世界一のビールを野生酵母でつくる』を読了。

先月(2019年10月)開催の刊行記念イベント⬇︎で、

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鈴木成宗さんのミニ講演を拝聴し、本書購入を即決していた経緯。

溢れる微生物愛から 〜!

講演でお話しのあった鈴木成宗さんの熱い生きざまに触れるのを楽しみに手に取った著書ですが、

本書は

 1章 餅屋で終わってたまるか

 2章 ビール造りの天国と地獄

 3章 ビール・サイエンスラボを目指す

 4章 無限の酵母愛を胸に

 5章 50歳にして自分も発酵してきた

 6章 伊勢をもっと発酵させてやる

 7章 こんな奴が成功しているクラフトビール界

 8章 日本のクラフトビール新時代に

 9章 オレ流発酵組織論

という章立てのもと、前半は

” 東北大の空手部では「できることをするのは稽古ではない。できないことをできるようにするのが稽古だ」をモットーに励んでいた。

そして、4年間、そのカルチャーにどっぷり浸かった私は、死ぬ思いでやればこの世に不可能なことはないと信じるに至った。

学生の世界でなら、これは通じたかもしれない。

この無駄な自信が、後々のビール醸造業への無謀な参入や、「絶対に無理」と揶揄されたビール世界大会優勝を目指す原動力にも、暗黒の30代を招く要因にもなるのだが当時の私は知るよしもない。”(p31)

という稽古後に血尿が止まらないことに、命の危険をも感じた学生時代の後半、

” 顕微鏡を覗かなければ存在が見えないプランクトンが、世界最強クラスの毒物を作り出す代謝の不思議さにすっかり魅了された。

食品衛生学講座には第一研究室、第二研究室、第三研究室とあったが、第三研究室は私の培養物で埋め尽くされていき、やがて「鈴木の部屋」と呼ばれるように。

毎日深夜まで研究を楽しみ、帰宅して当時夜11時台に放送されていた「大相撲ダイエジェスト」に間に合うと「今日は早く帰ったな」と感じる生活を送っていた。”(p33)

と執念を燃やすことになるビールづくりの素地が出来上がることに。

刊行記念イベントで鈴木成宗さんから頂戴したサイン

伊勢で二十代続く、二軒茶屋餅角屋本店の新規事業として全くのゼロの状態から

” 「また、微生物で遊べる」。若気の至りで申し訳ないが、その気持ちに尽きた。”(p40)

というところからビール醸造所を実際に立ち上げ、その後、しばらくは試行錯誤、鳴かず飛ばずで背負う多大な経済的にマイナスから

やがて

” 角屋は、少しずつビールの品質を高めるよう努め、2000年に日本の大会で金賞。

そして03年にはついに世界四大大会の一角の豪州のオーストラリアン・インターナショナル・ビア・アワーズ(AIBA)で金賞を受賞した。・・中略・・

AIBAの金賞は日本企業では初めての快挙だった。”(p65)

と徐々に今日の姿の礎が顕に。もっとも苦境は

” 「世界一なのになんで売れないんだ」”(p73)

の一文にも示されるように、この後も続きますが、尋常ならぬ微生物愛から世界に冠たる地ビールづくりの日々が読み手に興味深い形で記されています。

突き抜けていく思ひ

本の中半以降は、ビールづくり等に関しての専門性を帯びた内容に伊勢角屋麦酒の今後の展望等にも言及されていますが、

わたし的には

” 祖父も父親も365日のうち、359日は朝から晩までひたすら働く人だった。

その背中を見て育った私は、とりあえず動く、手を動かし続ける、それをモットーにした。

動いて動いて、失敗して、経験値をひたすら積む。「バカだな!」と思われるかもしれないが、誰よりも人一倍動くことで、ビジネスモデルの弱さ(というよりモデルも何もない状況)を補完してきた。”(p127)

に象徴される部分が痛快で、

鈴木成宗さんの岩をも砕いてしまうような真っ直ぐな生きざまが、存分に伝わってくる爽快な一冊でありました。


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