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白井聡さんが紐解く、この時代にこそ読むべき『資本論』の凄み:『武器としての「資本論」』読了

政治学者 白井聡さんの『武器としての「資本論」』を読了。

本書は、まずカール・マルクスが著した『資本論」に関して

“『資本論』のすごいところは、一方では国際経済、グローバルな資本主義の発展傾向というような最大限にスケールの大きい話に関わっていながら、他方で、きわめて身近な、自分の上司がイヤな態度をとるのか、というような非常にミクロなことにも関わっているところです。”(p003)

という古典ながら、今でも十分通用するという位置づけから

” なぜ毎日窮屈な服を着てぎゅうぎゅう詰めの電車に乗って会社に行かなければならないのでしょうか。『資本論』はこの疑問に答えてくれます。

私たちが生活の中で直面する不条理や苦痛が、どんなメカニズムを通じて必然化されるのかを、『資本論』は鮮やかに示してくれます。”(p004)

或いは

“「ヤバかったら、とりあえず逃げ出そう」となれば、うつ病になったり、自殺してしまったりというリスクから身を遠ざけることができます。

さらには「こんなバカバカしいことをやっていられるか。ひっくり返してやれ」ということにもなってきます。

『資本論』を人々がこの世の中を生きのびるための武器として配りたい ー 本書には、そんな願いが込められているのです。”(p004)

と、今『資本論』を読むべき必然性に説かれています。

(ウェビナー参加者向けの)購入本に書かれていたサイン

但し、先月(2020年8月)開催された本書刊行記念ウェビナーで言及のあった通り、

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石戸諭さんが迫った百田尚樹さんが時代の風を受ける深層:『ルポ 百田尚樹現象 愛国者ポピュリズムの現在地』読了

前々回、中間記⬇︎ をアップロードした

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石戸諭さん著『ルポ 百田尚樹現象 愛国ポピュリズムの現在地』を読了。

引き込まれる 普通の人々

(中間記後)読み進めた第二部は

” 百田尚樹とは「ごく普通の感覚にアプローチする術を感覚的に知る人」であり、百田現象とは「ごく普通の人」の心情を熟知したベストセラー作家と、「反権威主義」的な右派言説が結び付き、「ごく普通の人」の間で人気を獲得したものだというのが、第一部の結論である。”(p111)

を受け、

“「私は、教科書に従軍慰安婦が載らなければ、従軍慰安婦の問題なんか論じることはなかった。”(p131)

と、藤岡信勝東京大学元教授の問題意識に端を発した教科書問題について取り組んだ「つくる会」が辿った軌跡を中心に論が展開されていきます。

購入本に書かれていたサイン

自分的にしばし正念場が続きましたが、ページを重ねていく中で、本書を読み解いていくキーワードである「普通の人々」に言及された

” 熱心な運動家を動員するだけでは全く足りず、「良き観客」が参加して初めて初めて突き動かすことができる。

そのために運動は楽しくやる必要がある。なぜなら、楽しくないところに「常識」を持った「普通の人々」は集まらないのだから、正論である。”(p201)

或いは

” 彼(註:小林よしのり)にとって「観客」とは、一貫して「実は常識あるフツーの感覚の人々」である。

「読者」=普通の人々に対する絶対的な信頼と、自分こそがメッセージを彼らに届けられるというプロとしての自負もある。

小林は自分の武器を「常識」という言葉で表している。”(p214)

の前段を踏まえての

” 特に小林と百田は、「普通の人々」への絶対的な信頼をベースに「ポピュラリティ」を得た、第一級の「ポピュリスト」だ。”(p251)

といった箇所から、本全体的ではないものの理解の及ぶ範囲での学びを得られたように。

小林よしのりさんが耕した「右」の市場

興味深かったのは、小林よしのりさんが自身の代表作である『戦争論』を振り返り、

” 「『戦争論』以降、言論空間で何が変わったかといったら、左翼本が売れなくなった。

わしが新しい市場を作ってしまったということだよね。右方面に。

わしが、ブルドーザーでばあーっと地ならしして、はい、ここに市場ができましたっていう状態になった。”(p256)

と分析されているパート。

後日、百田尚樹さんから本書にサインを入れて頂きました。

小林よしのりさんの著書にまったく手が伸びていなかったこれまで、むしろ本書で言う左側の人との先入観もありましたが、

百田尚樹さんが支持を集める源流に、このような経緯があったのかと学習。

さておき、日ごろ自分自身が大衆であるとの意識は持ち合わせいないながら、

時代の風を正面から受け、これも本書で語られている

” 百田の作品を貫くキーワードを一つ挙げるならば、それは加藤(註:加藤典洋)も指摘するように「感動」である。

・・中略・・

百田の物語を読み、感動できる人は世の中では多数派である。”(p288)

と、その渦の中の一人として(笑)嫌な気持ちでもないですが 、本書を手に取った時点で期待した「自分が如何にして百田尚樹さんに寄せられていったのか」を客観視出来た感覚に読み応えを覚えました。

石戸諭さんが迫った百田尚樹さんが時代の風を受ける深層:『ルポ 百田尚樹現象 愛国者ポピュリズムの現在地』中間記

ノンフィクションライター 石戸諭さんの『ルポ 百田尚樹現象  愛国ポピュリズムの現在地』を読み始めて

第一部 2019  モンスターの現在地

 第一章 ヒーローかベテン師か

 第二章 彼らたちの0

 第三章 敵を知れ

 第四章 憤りの申し子

 第五章 破壊の源流

第二部 1996  時代の転換点

 第一章 「自虐史観」の誕生

 第二章 転身 ー 藤岡信勝と教師たちの「当事者運動」

 第三章 ポピュラリティ ー 小林よしのりを貫くもの

 第四章 「一匹」の言葉 ー 西尾幹二とその時代

 第五章 分水嶺 ー 『戦争論』が残したもの

と章立て(別途:序章、終章等)されているうちの第一部を読み終えたので、そこまでのおさらい。

気づけば百田尚樹さんに引き込まれていた

ぷら〜っと書店に立ち寄った際、最後の一冊と思われたサイン本を見つけ、

実際は最後の一冊ではなかったのだけれども・・

その巡り合わせに反応していた経緯。

内容的にも、振り返ってみれば新刊が出る旅に高い確率で購入するようになっていたり、

虎ノ門ニュース」の視聴であったり、自分自身の中で百田尚樹さんの影響力が及ぶ範囲内にいて、本で書かれてあるであろう考察に興味があって(=購入)。

全体を捉えるにはバックグラウンド理解の前提であったり、文が難解に感じられた箇所もあり、

中、後半で理解度を高めていけるものと考えています。

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古市憲寿さんが、敵味方の枠を取っ払い、できるだけ正直に綴られた連載集『誰の味方でもありません』読了

社会学者 古市憲寿さんの『誰の味方でもありません』を読了。

古市憲寿さんは、昨年(2018年)共著⬇︎を読んでいたり

<< 2018年12月4日投稿:画像は記事にリンク >> 國分功一郎さんと古市憲寿さんが議論した、巨大な複雑な社会での模索される暮らし方:『社会の抜け道』読了

TV番組などの出演から顔と名前は一致する状態であったものの、近寄り難さのようなものを感じていて、

それは本書に

” 小沢一郎に再婚相手を聞いたり、”(p12)

とあり、「あぁ、あの時の人かぁ・・」と。

本書を引き寄せたのはサイン本を見つけた⬇︎のがきっかけ。

<< 2019年5月20日投稿:画像は記事にリンク >> 読むサイン本に、読まぬサイン本で、サイン本考。

書かれている内容は、

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カンニング竹山さんが明かす、イメージを180°覆される福島の今:『福島のことなんて、誰もしらねぇじゃねえかよ!』読了

カンニング竹山さんが、福島県内に20回現地入りしたことを通じて上梓された

『福島のことなんて、誰もしらねぇじゃねえかよ!』を読了.-

サイン本@八重洲ブックセンター

書店に「何か、出てるかな・・」と立ち寄った際サイン本の販売を見つけ、また、福島の現状に承知していなかったことから

「日本人としては知っておくべきであろう」との使命感も刺激され購入。

福島について知らされる先入観、偏見・・

本書は、

” この本は全く福島県に興味がない方々でも楽に簡単に読めるように制作しよう、かつその中でも取材等々をした中から、正しい情報を載せよう、嘘はやめよう、正直に丁寧に作り上げよう!と決めました。

ですので今の東京電力福島第一原子力発電所の現状も取材し始めて訪問した2年半前とどう変わったか、今後どうなって行くのかなどもなるべく分かりやすく載せております。”(p8)

というコンセプトのもと、フィールドワークが土台となって文字に読みやすくまとめられています。

具体的にどのようなことが書かれているのかというと・・

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人類学者 奥野克巳教授が問うた「こうである」が一切ない世界からの学び:『ありがとうもごめんなさいもいらない森の民』読了

人類学者/立教大学異文化コミュニケーション学部 奥野克巳教授の『ありがとうもごめんなさいもいらない森の民』を読了。

昨秋、通信販売で入手した本とともに同封されていたチラシの

封入されていた本書を紹介するチラシ

記載内容から興味を持って購入した一冊。

囚われている思い込みからの解放

” 現代日本社会の私たちの周りで進行する諸問題の底の部分には、世界に囚われたかのような思いこみと言っていいほどの前提があるのではないか。

それは、生きていくためには働かなければならないという条件であったり、働くことが目的化して、働くことの中に発生する課題に向き合わなければならないという思いこみであったりす。

また国家という前提があって、所得に応じて税金を払わなければならない仕組みが常識としてあって、困ったことがあれば国家が助けてくれるはずだと考えていたり、

実際に、国家や政府にこうしてくれ、ああしてほしいと願ったりすることなどである。”(p 009)

と本書冒頭「はじめに」で問題提起があり、

” 思いこみような前提がないか極小化されている場所から私自身の思考と行動の自明性を、照らし出してみることはできないだろうか。

そんなところに出かけて行って、人間の根源的なやり方や考え方について考えてみることはできないだろうか。

そういった思いが、つねに私の頭の中にあった。”(p 010)

との仮説から、

” 直観としては、そうした理想に近い社会は、狩猟採集を主生業とする社会にあると思われた。

そのひとつが、熱帯のボルネオ島で、狩猟採集を主生業とするプナンである。

プナンは、ボルネオ島(マレーシア、インドネシア、ブルネイの三つの国から成る)に暮らす、人口約一万人の狩猟採集民あるいは元・狩猟採集民である。”(p 010)

を著者である奥野克巳教授が、一年+断続的にプナンの居住地を訪問し、行動をともにしたことで書き上げられたのが本書。

反省も所有もありがとうもない世界

シェアされている気づきの幾つかを引用すると・・

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菅野仁さんが迫った、「身近な人たちとのつながり方」と「親しさ」の本質:『友だち幻想 人と人の〈つながり〉を考える』読了

TV番組『世界一受けたい授業』で又吉直樹さんが絶賛されたなど、話題の書ということで書店で見かけること、しばし、

菅野仁さんの『友だち幻想  人と人のつながりを考える』を読了。

読み進めている中途から「大事なことが分かりやすく書かれているなぁ」と、内容への興味もありスピーディーに読了に至りました。

推薦の言葉並ぶ、帯裏側

渦巻く「不安」、信頼できる「他者」

数多く付箋した箇所の中から、印象的な記述を3つほど抜粋すると・・

” 現代におけるネオ共同性の根拠にあるのは、「不安」の相互性です。

多くの情報や多様な社会的価値観の前で、お互いの自分自身の思考、価値観を立てることはできず、不安が増大している。

その結果、とにかく「群れる」ことでなんとかそうした不安から逃れよう、といった無意識的な行動が新たな同調圧力を生んでいるのではないかと考えられるのです。”(p56)

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寺島実郎さんが明示する、人生100年時代を生き抜く慧眼:『ジェロントロジー宣言 「知の再武装」で100歳人生を生き抜く』読了

日本総合研究所会長、多摩大学学長で、ニュース番組ほかでのコメンテーターとしてもお馴染み寺島実郎さんの『ジェロントロジー宣言 「知の再武装」で100歳人生を生き抜く』を読了.-

先日参加した本書刊行記念の特別講演に合わせて入手していたもので、

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講演直前に(全体の)1/4ほど、講演後に3/4ほど。

購入前は馴染みないタイトルから(読了まで)時間を要するものかと思いきや

講演で概略を把握出来ていたことに、本の内容を分かりやすく、快調なペースで最終ページまで。

定年後四〇年を生きるロードマップ

冒頭の「ジェロントロジー宣言」で

” 日本において、ついに八〇歳以上の人口が一〇〇〇万人を超した。異次元とも言うべき高齢化社会の到来を、これまでの政策科学・社会科学は予見してはいたが、

その意味を理解した社会システム・制度の再設計は活かしてこなかった。”(p10)

と問題提起があり、

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