オーストラリアを日豪関係に40年以上携わる田中豊裕さんに学ぶ一冊「低負担高補償の福祉先進国」:『豪州読本:オーストラリアをまるごと読む』おさらい ⑲

『豪州読本:オーストラリアをまるごと読む』のおさらい編、第19弾.-

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<< 2015年12月18日投稿:画像は記事にリンク >> オーストラリアを日豪関係に40年以上携わる田中豊裕さんに学ぶ一冊「豊かな老後生活を実現する社会保障制度」:『豪州読本:オーストラリアをまるごと読む』おさらい ⑱

前回の続きで「第八章 暮らしのセーフティーネット」からの抜粋(後編)です。

定年後のライフスタイル

” 余生の楽しみ方は、日本でもそうであるように人それぞれであるが、オーストラリア人の楽しみ方は、一般的に旅行が大きな位置を占める。

夫婦そろってクルーズ船での世界旅行から、子や孫を訪ねる旅行までいろいろであるが、オーストラリア人は旅行が好きである。

ガーデニング、DIYは定番である。特に初期における老後の日常生活ではこの活動が一般的である。

オーストラリアの人は屋内、屋外ともこまめに自分で作業する国民である。

この国ではボランティア活動が盛んである。最近の統計では、600万人以上(成人の4割以上)の人がボランティア活動に参加し、その活動期間が約8億時間を超える。

これは、社会への経済効果を概算すると4兆3,000億円になるという。退職者の大部分が、大なり小なりボランティア活動に参加している。

奉仕活用に費やした時間は、年間約200時間にも上っている。この国はキリスト教の背景と影響が強く、もともと教会の活動に参画することが、伝統的に幅広く行われている。

また伝統的なメイトシップ、仲間意識から互助精神が強い国である。

ボランティアは、社会福祉、介護の分野での活動が大きな割合を占めている。

他に社会生活の中でスポーツ、教育、訓練、文化などの分野での活動に多くのボランティア組織が活躍している。

この国では美術館や博物館などの職員の半数近くがボランティアである。地方自治体に取ってボランティアは欠かせない。”(No.3548-3565)

セーフティーネットとしての社会福祉

” 日本とオーストラリアの高齢者養護に対する考え方を簡単に要約すると次のようになる。

日本では伝統的に高齢者の介護は、在宅で家族に委ねられてきた。特に嫁にかかる負担が大きかった。

この負担を軽減するために近年では公の介護サービスが発展してきた。家庭での介護を希望する人が多いが、

日本の高齢者は比較的裕福であり民間の老人ホームや介護施設に入居することができる。

家族が責任を持つ在宅介護から施設介護へのシフトである。そして公的なサービスは中央政府から地方自治体にその責務が移行した。

オーストラリアでは伝統的に家族の代わりに、慈善団体、宗教団体、地域社会が高齢者養護に関して重要な役割を担ってきた。

近年政府は、箱物に補助を出して養護、介護施設の充実を図ってきた。

しかし今日、オーストラリアでは逆に、連邦政府が主体となり州政府、地方自治体とも補助を出し、施設介護中心から在宅、地域での介護に重点が置かれるようになる。

これは施設介護にコストがかかりすぎ、高齢社会を迎え政府予算をできるだけ膨らませないようにすることが背景にある。

在宅介護の場合、嫁が主役の日本と違って、おもに介護の役割を持つのは配偶者である。

在宅介護には介護補助金が政府から支払われる。最高月1,000ドル程度である。また介護報酬も日本よりずっと高い。

日本では、2000年4月から介護保険制度がスタートした。保険をかけることにより老後の介護に備えようというもので、新たな目的税である。

年金、健康保険と同じで保険料を納めたものにしか適用されない。

しかし、オーストラリアでは健康保険(メディケア)で保険料の徴収が低率で行われているが、失業者や、低所得者はこの保険料を納める必要がない。しかし健康保険のサービスは受けられる。

年金、失業手当は、政府の一般財務支出で賄われている。いわゆるセーフティーネットである。

日本は保険料方式、オーストラリアはセーフティーネット、これが社会福祉における日豪間の基本的な違いである。

比較すれば、高負担中補償の日本と低負担高補償のオーストラリアである。

なぜこのような違いが生じたのかは福祉に対するその歴史と認識による。オーストラリアでは1900年、すでに非営利団体による訪問介護がスタートしている。

その後すぐに世界に先駆け障害年金、老齢年金、疾病手当を創設している。やはりオーストラリアは世界でも有数な福祉先進国である。”(No. 3620-3647)

低負担又は負担無しで健康をサポート

” オーストラリアの健康保険について簡単に解説すると次のようになる。健康保険は、長い間個人の責任において民間の保険会社との契約で行われていたが、

先の世界大戦後初めての労働党政権が誕生したとき、政管の健康保険が1975年に導入された。

それが今日のメディケア(1984年導入)という国の健康保険制度の基礎になった。

この制度の財源は、給与所得者から徴収される課税所得の1.5%と政府の一般会計で運営されている。

所得者から徴収される金額と政府予算の割合は約1対6である。

メディケアでカバーされるものは、日本の健康保険とそんなに大きな違いはないが、受益者負担は、日本の8.2%(雇用者、被雇用者折半)と比べると大変低い。

ただし、所得が多い人、独身の場合、年間の所得が5万ドル、妻帯者は所得合計が10万ドル以上の場合にはさらに1%が源泉徴収される。

それでも個人負担は合計2.5%である。企業負担は今のところない。

診療、治療などに要した費用の自己負担に関しても、日本では3割負担が、一般的であるが、オーストラリアでは基本的に健康保険から支払われる。

メディケアで受診できるのは、公立の病院であるので、診察待ち時間が大変長く、一日仕事になることがある。医師の選択はできない。

また歯の治療は、適当外になっている。そのために多くの人は、民間の保険会社と任意保険の契約を結び、私立病院、診療所で診察、治療を受けるケースが多い。

国民の約半分は民間の私的な医療保険に入っている。なお、収入の低い層に関しては、メディケアの保険料が免除されている。”(No.3656-3673)

章の締め括りで、著者の田中豊裕さんはオーストラリアの保険制度を

” 弱者に対する配慮、社会的公正をして、筆者はこの国をハッピーカントリーと呼んでいる。日本とはずいぶん違う。

日本では収入が低くても健康保険は目的税として徴収される。

保険料が払えない低所得者、低年金収入の高齢者は無保険の状態になり、すべて医療費の全額自己負担を強いられ、病院や医師にかかれない状態になる。

オーストラリアでは、低所得者や社会的弱者に対するセーフティネットが当たり前に整備されている。

オーストラリアの健康に関する年間予算は約8兆円で(GDPの約10%)、1人当たり4,000ドルで日本、イギリスなどより多い。”(No.3727)

と評しています。

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学べるであろう福祉への取組み

本では上記内容に関する掘り下げた内容や老人福祉サービスであったり、障害者ケアであったり、

ミールズ・オン・ホイールズ(食材の買い物や食事の準備ができない身障者、老人への配膳サービス)などについて言及されています。

日本と同じく、オーストラリアでも高齢化社会への突入から様々な施作が実施されており、引用箇所からかなり奏功している面が読み取れ、日本の参考となる部分も多いとの感想を持ちました。

次回は「第九章 他民族、多文化国家」に移行します。

 


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