脚本家 丸山昇一さんが振り返った松田優作と並走した日々:『生きている松田優作』読了

脚本家 丸山昇一さんの俳優 松田優作さんとの回想録『生きている松田優作』を読了。

ふら〜っと立ち寄った書店で、サイン本を見つけ

本で触れる初の松田優作伝

松田優作さんへの興味から購入していた経緯。

構成は、(1979〜1989、2024)年毎に丸山昇一さんと松田優作さんとの交流、対峙といったことがまとめられており、冒頭は

” じゃ、何かい?  もうこの世にはいないってこと?  ということは、二十四時間いつでも当方の都合など関係なく呼び出され、延々と出口の見えそうにない対話につきあわされ、いつ潰されるかわからないプレッシャーをいくつも背負わされたあの苦痛がもうなくなるってことか。”(p006)

と松田優作さんの訃報の知らせから丸山昇一さんが抱いた思いに二人の関係の近さが読み取れ、生前、交流を重ねる中で

” 「お前、キョーハンだから」”(p119)

” 「お前が本当に大した脚本屋だから、信じて、信じて、頼んでるんだ」”(p155)

松田優作さんがリードする形で次元が引き上げられていく過程を目にすることが出来ます。

” 「『探偵物語』は丸山の 聖女が街にやってきた が、第一話になる」”(p036)

松田優作さんのTVでの代表作『探偵物語』で脚本を手掛けたことに端を発し、

” 「お前はなぜ、俺のことをこんなに知っている?」”(p107)

と丸山昇一さんが松田優作さんの内面深くに入り込み認められたがゆえ、葛藤、苦しみ等を共有していく軌跡が印象的。

購入本に書かれていたサイン

松田優作さんの

” 「やっと出て、東京に出て、役者になれるかどうかわからない時に、いろんな仕事をした。横浜の地下鉄工事で人夫をした時、初めて俺は、自分の肉体が精神から遊離する瞬間があるのを知った。誰とは言わないが、ひどい迫害を受けて、殺意を抱いた。辞めようとしたが肉体が勝手に動いて相手を許さない。そいつは不意にどこかに消えた。殺める寸前で、肉体も勝手に動きをやめた」”(p106)

と天職に出逢うまでの苦悩、闇に触れる記述あれば

” あとで聞けば、優作は体重を10キロ以上落とし、奥歯を抜き、脚を何センチか切り落としたいと願ったという。

痩せすぎの悪霊は、一ヶ月山の中にこもり、こうして我々の前に姿をあらわした。”(p085)

と役を演じきることにみせた凄まじき執念がうかがえる記述あり。さまざまな思いを交差させていく中、

” 優作と行けるところまで行こう。

優作のためには、優作となら一緒に死んでもいいと思った。

惚れた。

その分、同じくらいの憎しみを抱くけれど。”(p170)

と丸山昇一さんに実感させるに至った場面の数々に読み応えを得られました。


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