養老孟司先生と中川恵一先生が交わした、医療、人生、死との向き合い方:『養老先生、病院へ行く』読了

養老孟司先生と、中川恵一東京大学大学院医学系研究科特任教授の共著『養老先生、病院へ行く』を読了。

サイン本入手機会に

出典:紀伊國屋書店新宿医書センターTwitter(画像はTweetにリンク)

即応して購入。

本書は

 第1章 病気はコロナだけじゃなかった(養老孟司)

 第2章 養老先生、東大病院に入院(中川恵一)

 第3章 なぜ「医療」と距離をとるのか?(養老孟司)

 第4章 なぜ病院へ行くべきなのか?(中川恵一)

 第5章 特別鼎談 養老先生、どうして病院に行くのが嫌なの?(養老孟司 x 中川恵一  x ヤマザキマリ)

と章立てされ、

 ” ご無沙汰しています。今回は私自身のことですが、昨年から体重が70kg台から50kg台まで落ちて(以下省略)”(p45)

と医療機関の推薦、紹介を求める養老孟司先生発信メールが、中川恵一先生に届き、

当初予定されていた7月の受診が、養老孟司先生の予定が同月に立て込み、6月に前倒ししたことで

” 結果的に、養老先生は6月24日に東大病院の私の外来を受診しました。今にして思うと、7月まで待っていたら、どうなっていたかわかりません。”(p48)

と進行していた心筋梗塞が、実は緊迫の状況にあった当時の回想録に始まり、

病院嫌いで知られるとの養老孟司先生の

” なぜ病院に行くのに決心がいるのかというと、現代の医療システムに巻き込まれたくないからです。

このシステムに巻き込まれたら最後、タバコをやめなさいとか、甘いものを控えなさいとか、自分の行動を制限されてしまいます。

コロナで自粛しているのに、さらなる自粛が「強制」されるようなものです。”(p18)

というデータ偏重に対する現代医療の懸念から、

” 体調が悪くなれば、また身体の声が聞こえてくるだろうし、それががんで手遅れならば仕方ないと素直に諦めます。

今回、病院に行ったのも身体の声が聞こえたからですし、たまたま死なずにすんだということでしょう。”(p86)

身体の声を聞くことの大事さを説かれる一方、中川恵一先生は

” 日本でのがん検診の受診率は2〜3割程度です。内閣府が調査した「がん検診未受診の理由」(平成28年)によると、1番多い理由は「受ける時間がないから」(30.6%)です。しかし実際のところ、半日休めば検診は受けられます。

・・中略・・

1〜5位のいずれも、医療に対する正しい知識があれば、理由にならないものばかりです。ここから読み取れるのは、日本人のヘルスリテラシー(健康や医療に関する情報を正確に理解し活用できる能力)が低いということです。

ヘルスリテラシーが低い人は病気や治療の知識も少なく、がん検診や予防接種などを利用しないため、病気の症状に気づきにくく、死亡率も高くなることがわかっています。”(p113)

と、(潜在的)患者側が内包している問題点を示され、

幸い医療機関と距離を保てている自分としては、今後向き合うべきこととして考えさせられるヒントが点在していました。

意識の向けどころを変化させ得られる効用

そのような中、中川恵一先生の

 ” 私が勧めているのが、生活の中に「マインドフルネス」を取り入れることです。

マインドフルネスとは、座禅などの仏教の瞑想法から生まれたもので、「今、この瞬間を大切にする生き方」のことを言います。

マインドフルネスには2つの重要な要素があります。1つは、今の自分がどのような状態にあっても一切「判断をしない」こと。

もう1つは、「今この瞬間に意識を向ける」ことです。判断しないことで、自分がありのままでいることができるようになるのです。

今この瞬間に意識を向けることで、周囲のことに気をとられなくなり、心が穏やかになると言われています。

がん患者さんは、時間のことばかり気にしていますから、時間にとらわれない生活が必要です。それで私は患者さんにもマインドフルネスを勧めています。

マインドフルネスな状態になるためには、大脳の働きを一時的に遮断する時間が必要です。

養老先生の言うように、都市は大脳が作り出したものですから、都会に住んでいる人は、あえて自然の中に足を運ぶなどすることで、今だけを意識する時間が持ちやすくなるのではないでしょうか。”(p139-140)

といった手軽に出来るであろう実践法の紹介もあり、

購入本に書かれていたサイン

懸念が示されていたヘルスリテラシーを高めるべき気づき(の必要性)に、誰しもが抱える加齢/老いとのあるべき姿での向き合い方に思い及ばされる著書でありました。


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