筒井康隆さんが辿った九十余年の軌跡:『筒井康隆自伝』読了

筒井康隆さんが

” 作家が自伝を書く限り、他人の言ったことの引用は禁じられるべきだ。そう思うからこの自伝は極力、自分が見聞きし体験したことに限っている。”(p7)

と本の書き出しに記した『筒井康隆自伝』を昨日読了。

本書は、

 芽吹いて蕾 ― 幼少期

 ヰタ・セクスアリス ― 少年期

 喜劇への道 ― 青年前期

 笑いと超現実 ― 青年中期

 波涛に乗って― 青年後期

  さらば中間小説 ― 中年期

 老体化? 老大家?

と章立てされ、全183頁。

最初の頃は、筒井康隆さんご本人(周辺)しか知り得ないであろう個人名が相次ぎ「よく覚えているなぁ」といったくらいで淡々と読み進め、面白くなってくるのは

” ある日旭屋で買ってきたジャック・フィニイの「盗まれた街」という長篇SFを読んで、その面白さに仰天した。”(p84)

という青年中期 に訪れたSF大家となる転機や青年後期 になると

” ここに書いた「最高有機質肥料」が「ウンコを食べる話」としてわが話題作の一つとなる。挿画の和田誠はうどんを食べながらこれを読んでしまった。”(p109)

と私個人、筒井康隆フリークの教員から披露され存在を知らしめられるに至ったトリガーとなった作品の登場をはじめ、タイトルが頻出するようになりグイグイと惹き込まれていきました。

個人名に加え

” 「心臓に悪い」は最初「別冊文藝春秋」に渡したのだが、この時の担当の豊田健次がやたらに威張っていて、ラストが気に食わんと言って書き直しを命じてきた。おれは書き直さず、これを「オール讀物」に渡した。豊健とはずっと仲が悪く、彼が「オール讀物」の編集長になったのでおれと仲が悪くて彼にとって致命的だから、湯川豊の仲介で仲直りをしたが、豊健はその席でもまた失礼なことを言って、湯川さんは飛び上がっていた。”(p122)

と感情赤裸々な一文も散見され、読みどころに。

入手本に書かれていたサイン

数多の著作に、断筆宣言等、マニアであらずともいろいろあったことが知られる筒井康隆さんの生涯が200ページ弱ということはなかろうと、さらっと振り返られたものと思料されますが、ファンとしては作品に絡んだ事件簿の記述等興味深く、また結びでの

” 自伝はこれで終わる。今後自伝に書くような大きな変化はないと思うからだ。本書の読者諸兄におかれては、また別の形で掲載されるであろう小生の文章をお待ちいただきたいものである。”(p183)

とあり、今後への予告が示されたことも本書に触れた特典と感じられました。


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