筒井康隆先生と蓮實重彦さんの対談、批評、書簡による交差:『笑犬楼vs.偽伯爵』読了

筒井康隆先生と蓮實重彦さんの共著『笑犬楼vs.偽伯爵』を先週末(2023/3/5)読了。

筒井康隆先生のサイン入りを入手出来る機会を捉え

購入時の画面をスクリーンショット *画像は一部加工

入手していた著書。

遠からずも近からずの距離感から

本書は

 まえがき 筒井康隆

 I  対 談  同時代の大江健三郎

  II 批評  『伯爵夫人』論/『時をかける少女』論

      筒井康隆  情欲と戦争

      蓮實重彦

 III 往復書簡    笑犬楼vs.偽伯爵

 あとがき   蓮實重彦

と章立てされ、

対談では

” 筒井  中江健次が「実際に作家の中で大江さんほど頭のいい作家はいない」と言っていましたけれども、私もそう思うんです。今、作品を読み返してつくづくそう思います。

蓮實  それは頭がいいと言うんでしょうか。頭脳明晰というより、世界に対して、あるいは言葉に対してどのような姿勢をとるかということを本能的に心得ているのではないかと思います。”(p37)

といった大江健三郎さん論に、批評では筒井康隆先生が蓮實重彦さんの『伯爵夫人』のついて

” 江戸切子のグラスで芳醇なバーボンをロックで飲んだ。そんな読後感の作品である。”(p65)

の一文から始まる論評に、逆に蓮實重彦さんからは

” 文学において、過去は記述できるが、未来はそれを拒むものだからである。筒井康隆の『時をかける少女』とは、記述を拒まれたその未来に向けて開かれた大胆にして繊細な散文のフィクションにほかならない。”(p86)

と各々の代表作への言及に、

購入本に書かれていたサイン

最後の往復書簡では

” ところでお手紙の冒頭では私の寝煙草について厳しいご叱責をいただいたのですが、これだけは何卒お許し下さい。三、四十年前からの入眠儀式なので、これをやらないと眠れません。”(p154)

と距離感感じさせる内容も含め、長きに及んで接点を持たれてきたお二人の遠からずも近からず?といったような関係性漂ってくる本書ならではの世界に引き込まれる共著となっています。


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