写真家 大竹英洋さんが振り返った夢の中に登場したオオカミに始まった旅の軌跡:『そして、ぼくは旅に出た。 はじまりの森 ノースウッズ』中間記

写真家 大竹英洋さんの著書『そして、ぼくは旅に出た。 はじまりの森 ノースウッズ』を読み始めてから

 第1章 夢を見た

 第2章 あの頃

 第3章 最果ての町

 第4章 森と湖の世界へ

 第5章 荒波を越えて

 第6章 なぜ写真だったのか

 第7章 流れゆくままに

 第8章 探検家ウィル・スティーガー

 第9章 ホームステッドの日々

 第10章 ジムと過ごした時間

 第11章 デレーチョの爪痕

 第12章 時は流れて

 第13章 はじまりの場所へ

と、章立てされているうち「第7章 流れゆくままに」まで読み終えたので、そこまでのおさらい。

夢に現れた一頭のオオカミ

(2021年)ゴールデンウィーク中に往訪した写真展で

<< 2021年5月7日投稿:画像は記事にリンク >> 大竹英洋 写真展 ノースウッズ ー 生命を与える大地 ー 往訪記

サイン貰い用に購入していた一冊。

晴れて目的は果たしたは良いが、いざ読む段になり北米大陸の大自然に関する内容で400ページ超のボリュームに不安が過ぎるも

” ぼくは大学時代から山歩きを始め、自然のなかを旅することに魅せられつづけてきました。

人里を遠く離れた山奥の世界は、都会育ちのぼくにとって新鮮な驚きの連続だったのです。

卒業後もずっと自然と関わっていくにはどうしたらいいのか。そのひとつの答えとして、カメラという道具を手に取りました。

自然に深く分け入り、そのさきで出会う光景や野生動物、ふしぎだなと感じたことを写真におさめて、その体験や発見を人々と共有していきたい。

それが、個人の趣味を越え、他者に伝えるだけの意味あるものにできれば、仕事としていつまでも自然のなかを旅できるのではないかと考えたのです。”(p14)

と抱いていた初心から

” あれは大学四年の、秋の夜のことでした。いつものように自分の部屋で眠っていると、夢のなかで、ぼくは薄暗い木の小屋の中にいました。

壁も床も板張りで、窓だけがぼんやりと明るく、外に目をやると、ちらちらと雪が降っているのがわかりました。

ぼくは窓のそばへ行き、外の様子を眺めました。地面にはうっすらと白い雪が積もり、あたりには北国を想わせる濃い緑色をした針葉樹の木立がどこまでも続いていました。

< ここはいったい、どこなのだろう >

ぼんやりと森に目をやった次の瞬間、視界にすっと灰色の影が踊り出ました。そしてその影は、近くに生えている一本の木の脇で立ち止まり、こちらを振り返ったのです。

そこに立っていたのは、一頭の立派なオオカミでした。ぼくはこれまでにオオカミを見たことはありません。

でも、そのとき確かに、目の前に立っている巨大なイヌ科の動物を見て、なんの疑いもなく「オオカミだ」と思ったのです。”(p19-20)

という夢、それを見たのが

” その当時、ぼくは写真家になることを決心して、最初のテーマについて考えているところでした。

野生の残された大きな自然を相手にしたい。でも具体的に、どこでなにを撮影するのか、すべて白紙の状態でした。

アラスカのクジラ、アフリカのゴジラ、南極のペンギン・・・。撮ってみたいと思えるテーマはいろいろありました。

どの対象も興味深く、もしかしたら人生のすべてをかけることになるかもしれない。

だからこそ、その選択には決定的な理由が必要でした。しかし、どんなに考えてみても答えがみつかりません。

その動物の生態を調べてみたり、撮ってみたいと思える理由を探してみたりしましたが、理屈を並べただけではどうにもしっくりこないのです。

そうして、いたずらに時間だけが過ぎていきました。そんなときに見たのが、この夢だったのです。”(p20)

という巡り合わせから、最寄りの図書館に足を運び所蔵されていた写真集『ブラザー・ウルフ  われらが兄弟、オオカミ』を見つけ、掲載されている写真群に圧倒されたことが原体験となり、

” 可能性がゼロかどうかなんて、やってみるまで誰にもわかりません。どうせ一回きりの人生です。ダメもと・・・ それくらいの挑戦をしないと、人生なんておもしろくなりようがないと思っていました。そうと決まったら行動です。”(p26)

と意を決し、僅かな手がかりを頼りにアメリカ ミネソタ州の大自然の中に住まう同写真集の撮影者ジム・ブランデンバーグを訪ねていく冒険記といった内容に大いに惹き込まれていきました。

圧巻の行動力、実現されていく夢の軌跡

前半は想定外の展開に見舞われ続けながら圧巻の行動力で局面を切り拓いていき、後半は写真家の道を進む端緒を掴んだ大竹英洋さんの(写真家の)礎に触れることになろうかと予測しますが、

前半が想像の上を行く展開の連続であっただけに、後半も予見を持たず、ことの推移に没頭したく、つづきが楽しみです。


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