山内昌之さんと佐藤優先生に学ぶ、日本史を軸に考える世界史:『大日本史』中間記

歴史学者山内昌之さんと元外務省主任分析官で作家の佐藤優先生共著の『大日本史』で

全部で第八回まであるうちの第四回まで読み終えたので、そこまでのおさらい。

本を開いて最初の「まえがき」で

” この『大日本史』は、日本史を軸に世界史を考え、日本史との関連で世界史を理解する人びとの参考になることを願っている書物である。

具体的には二〇二二年年度から実施される高校の学習指導要領に入る新必履修科目「歴史総合」の発展に貢献したかったのである。”(p3)

という出版背景のもと、

第一回 黒船来航とリンカーン

 第二回 西郷と大久保はなぜ決裂したのか

 第三回 アジアを変えた日清戦争、世界史を変えた日露戦争

 第四回 日米対立を生んだシベリア出兵

 第五回 満州事変と天皇機関説

 第六回 二・二六事件から日中戦争へ

 第七回 太平洋戦争 開戦と終戦のドラマ

 第八回 憲法、天皇、国体

といった章立てで構成。

文脈で捉える史実

本書は、山内昌之さんと佐藤優先生の対談で進められていきますが、全体的に「レベル高いなぁ」というのが今のところの感じで

比較的、理解が進んだ第四回から抜粋すると・・

p118 第四回(の流れ)

” 山内 第一次世界大戦(一九一四 ー 一八年)は、「大戦」の名にふさわしく、大きく世界秩序を変えた戦争でした。

この「大日本史」では、特に日本がこの戦争にいかに関わったのか、そしてその後どのような影響を受けたかに重点を置いて、論じていきたいと思います。

この第一次大戦を最も巨視的に見るならは、十九世紀までの「帝国」が崩壊したということになるでしょう。

ドイツ帝国、ロマノフ朝のロシア帝国、ハブスブルグ朝のオーストリア=ハンガリー帝国、トルコのオスマン帝国。これらの帝国がすべて崩壊します。

ロシア革命が起こりニコライ二世が退位、ドイツのヴィルヘルム二世はオランダに亡命、トルコではやがてケマル・アタテュルクによってトルコ共和国が成立する。

また、すこし時期は前だけれど、一九一一年に中国でも辛亥革命で清朝が崩壊しましたね。こうして十九世紀までの旧帝国が次々に崩壊し、世界が変貌していきます。

佐藤 そのなかで、唯一生き残った大帝国が、大英帝国なんですね。

山内 そうです。しかし、その大英帝国にしても、決して無傷では済まなかった。

戦後まもなくアイルランド独立運動がはじまり、南アフリカなどの自治領が独自性を強めていく。

さらに後には、それまで支配していたインド、シンガポール、マレー半島での統治にも綻びをきたすなど、その国力の弱体化を露呈し始める。

それが太平洋戦争劈頭に、日本のマレー作戦、プリンス・オブ・ウェールズとレパルスの撃沈、シンガポール陥落となってあらわれるわけですね。

こうした旧帝国勢が崩壊、衰退していくのと対照的に、力を強めていく「帝国」がありました。

それが日本とアメリカだったのです。

佐藤 たしかにアメリカは自由主義、共和主義を標榜していますが、外交的には完全に帝国主義国家ですね。

米西戦争(一八九八年)を通じて、カリブ海ではプエルトリコやキューバ、太平洋ではフィリピンを獲得し、アジアへの進出も狙っていた。

山内 太平洋国家としても覇権を伸ばしてくるわけですね。そこで、もうひとつの新興の帝国、日本と対峙する宿命にあったわけです。

つまり、第一次世界大戦を機に起きた世界秩序の再編のなかで、新興の帝国として強化された存在こそ日本であり、アメリカ出会った。”(p119-120)

と、史実を文脈づけた形で論が展開されていき(学校の授業では暗記偏重といった感じでこのような掘り下げは希薄でしたが、)

相応の礎が築かれている方々には、見合う読み応えがあるものと思います。

私自身では一旦最後まで読み切って、そのエッセンスだけでも感じ取ることが出来ればと、後半で展開される内容にも学びをより多く。


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