菊澤研宗さんが『失敗の本質』とは異なる切り口で迫った大東亜戦争の深層:『組織の不条理 日本軍の失敗に学ぶ』読了

先日、中間記↓を

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アップロードした『組織の不条理 日本軍の失敗に学ぶ』を読了。

読了に近づくにつれ、佐藤優先生が先般の『失敗の本質』を読む京都合宿↓で示された見解、

<< 2017年9月7日投稿:画像は記事にリンク >> 佐藤優先生が読み解いた『失敗の本質 〜日本軍の組織論的研究』:京都合宿企画 「危機研究の名著『失敗の本質』を読む」 受講記 ②

「とち狂った人たちが戦争に突き進んでいったのではなく限定合理性の中で、合理的に行動していた」は、本書の主張に沿ったものと実感。

そのことは本書に

” すべての人間の合理性は限定されており、人間は限定された情報のなかで意図的に合理的にしか行動できないという限定合理性の立場から、日本軍の行動を新たに分析したのが本書である。”(p240-241)

との前提であったり、

” 単純にいえば、変化によって生み出されるコストがあまりに大きいか、あるいは変化によって得られるベネフィットがあまりに小さい場合、

たとえ現状が非効率で不正であったとしても組織はなおその行動をとり続けることが合理的になるような不条理に導かれることになる。”(p271)

という一文に要点が示されていたように思います。

不条理を超えて・・

読書のプロセスで印象的であったのは、上記のような結論を受け手の最終「第10章 組織の不条理を超えて ー 不条理と戦う企業戦士たち」

例えば、

” 北米およびヨーロッパで便利な時間帯と低価格で事務用品を販売している巨大スーパー「ステイプルズ」を設立したトーマス・ステンバーグの経営も注目に値する。

彼は、常に周囲を見て足りないものはないかと批判的に考察することを社員に奨励し、もし他の産業の企業で否定できない素晴らしい点があれば、積極的に取り入れようとする批判的合理的な人物である。

しかも、彼は。誤りから学ぼうとするセンスも持ち合わせている。

彼は、「一か八かの賭けをした者を叱ってはならないし、道を切り開こうとする人間、とにかくやってみようとする人間は、失敗しても絶対に叱るべきではない」という。

本来、誰も失敗などしたくない。しかし、そうなっても大丈夫だということを社員にわからせることによって、社員は積極的に誤りから学び、こうした社員たちによって会社は発展することになる。これがステンバーグの考えなのである。”(p291-292)

というケーススタディ/処方箋の提示に、

或いは、不条理を解決するための方策に言及した項目で哲学者イマヌエル・カントの考えを引用した

” 価値判断はきわめて主観的であって客観的ではない。というのも、価値判断にもとづく行動の原因は、常に自分自身にあるからである。

しかし、価値判断にもとづく行動は主観的であるが、自律的でもある。自律的というのは、他律的とは逆の意味となる。

損得計算の結果とは無関係に、お金がもらえなくても、上司の命令がなくても、制度やルールがなくても、自分の意志で「正しい」と価値判断し、能動的に行動することをいう。

人間は、そのような自律的な存在でもあるとカントは考えたのである。”(p375-376)

の部分は、生きざまを質されるような思いに至り、私にとっての本書の価値を高めてくれる記述でした。

再読して深めていきたい理解

(中公)文庫版のためのあとがきを含め全386ページに及ぶ分量もあり、

一読しただけでは理解に至らぬことに、読み逃しも多々あろうと『失敗の本質』と合わせて再読の価値が高い一冊に思っています。

中間記アップ(ロード)の時点では、著者の菊澤研宗教授からレスポンス(RT)頂く機会もあり

出典:Twitterの通知(表示)から

名誉で嬉しい出来事でした。有難うございました。

 


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