伊藤政則さんがロックシーンに遺したかった現場体験史:『伊藤政則の”遺言”』読了

音楽評論家 伊藤政則さんの

『伊藤政則の”遺言”』を読了。

伊藤政則さんの番組は普段フォローしていないながら、ロックに対する造詣の深さは喋りに触れる度に十二分に感じますが

本書は、2019年6月時点で14回を数えるトークイベント『遺言』の第1回から第5回までの内容が収録されているもので

 第1章 ロックの時代が来た!70年代初頭の”日本の洋楽”事情

 第2章 ハード・ロック誕生 スウィンギング・ロンドンと英国ロック

 第3章 IRON MAIDENの衝撃 ハード・ロックからヘヴィ・メタルへ

 第4章 アメリカ主導の時代 ビッグ・ビジネスとなったヘヴィ・メタル

 第5章 崩壊から再構築へ 90年代と”ビッグ・イン・ジャパン”

という目次に沿って、

 ” 海外からロック・バンドが定期的やってきて日本でコンサートを行なうというのを決定付けたのが、1971年。

最初に来たのが、武道館でやったBLOOD SWEAT & TEARSというブラス・ロック・バンドですよね、ちょっとジャズが入っている。”(p13)

と日本にロックが徐々に浸透していくところから

” 広瀬:日本の洋楽におけるヘヴィ・メタル/ハード・ロックという切り口で考えた時に、90年代はどういう時代だったと伊藤さんは総括されますか?

伊藤:アメリカのシーンが崩壊したことによって一度は崩壊し、そこから再構築に向かった時代だったと思う。”(p204-205/註:広瀬=聞き手の広瀬和生 BURRN!編集長)

ところまで、200ページ強に及んで見事時系列にまとめられています。

現場主義ならではの臨場感

見事と書いたのは、冒頭、広瀬和生編集長の

“「日本のメタル・ゴッド」伊藤政則氏は、徹底した「現場主義者」である。歴史の真実は、後追いで記録や文献を検証しただけでは決して見えてこない。

実体験者の「目撃証言」があってこそ、初めて真実が浮き彫りにされる。”(p4)

に、凄みの本質が表現されていると思いますが、

時代とともに伊藤政則さんが実体験されたことが、しっかり文章化されていて読み応えのある内容で、

序盤は横書きの文章に苦戦気味であったものの、

1980年代頃から自分の理解度も上がってくるので、読み終えてしまうのが、残念なほどまでに。

今さら聞けないことに、シーンの変遷に

実際、どのようなことが書いてあるのかと、個人的に興味深かった箇所を3つくらい抜粋してみると・・

“「ハード・ロックとヘヴィ・メタルの違いはなんですか?」って訊かれることが凄く多い。

歴史はずーっと続いているものだから、実は同じだったりするんだけど、「車もモデル・チェンジするでしょ?」ということなんだよね。”(p129)

と、今更聞けないふわっとしたことに ^〜^;

” 一番得したおは、最初にレコードを出したQUIET RIOTなんだよね。全米No.1になるから。

あそこで「商売になることが判った」ということが大きいんだと思う。

QUIET RIOTの「METAL HEALTH」(1983年)は「Pasha Music」っていう、『CBS』が総括するレーベルから出てて、全米No.1になったからね。

あれがメタル・シーンにとっては凄く大きかったけど、逆に言うと、ちょっとQUIET RIOTは可哀想だった。勘違いさせちゃったんだよね。

現象に乗っただけで、別に人気があるわけじゃないからね。(笑)ケヴィン・ダブロウには申し訳ないけど。”(p135)

という当時の熱気を知る者の一人として妙に納得させられてしまう総括に、

” 「グランジ/オルタナティヴが出てきたからハード・ロック/ヘヴィ・メタルがダメになった」というのは絶対にない。

ないんだけれでも、そういう風に仕掛けた人達がいた、というのは事実。”(p197)

自分自身の見方を覆されるシーンの捉え方に・・

読後、(ハード)ロックシーンへの理解度が幾分と高められたように感じています。

(2019年6月)月初に参加した『遺言』Vol. 14 後に

<< 2019年6月4日投稿:画像は記事にリンク >> 伊藤政則さんが語ったロック史の知られざる舞台裏:伊藤政則の『遺言』VOL. 14 参加記

伊藤政則さんと写真撮るべくため購入していた著書でしたが ^^いい選択でした ^〜^♪


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