オーストラリアが、国家戦略としてデザインしたミドルパワーの実像:『物語 オーストラリアの歴史 多文化ミドルパワーの実験』読了

『物語オーストラリアの歴史 多文化ミドルパワーの実験  多文化ミドルパワーの実験』を読了。

昨年8月から年末まで池間哲郎先生の「日本塾」で、学校で殆ど習う事のなかった近現代史を中心として日本史について学びましたが、

次はオーストラリア@デスクワーク。

moving-to-australia

豪放さと、しぶとさと

本(電子書籍)を開いて最初の「はじめに」で、本書に関して・・

” この本を通じて、オーストラリア社会に関する一面的で単純なイメージを乗り越え、

オーストラリア人のものの考え方や価値観を探ろうと思う。” (1% – 百分率は紙の本で言うところのページ数に相当 / 以下同様。)

一面的なイメージとは・・

” 有袋類のコアラやカンガルー、卵生の不思議な哺乳類カモノハシ、海岸スポーツの拠点グレートバリアーリーフ、テニスコートに舞う白球、

世界最大の一枚岩エアーズロックに降り注ぐ真っ赤な夕日、流星が飛び交う夜空に輝く南十字星、真夏の太陽とブッシュ・ファイアー(山火事)、

石炭や鉄鉱石の露天掘り、さらには牛肉のオージービーフなど、いずれも動植物や大自然に集約される傾向にある。” (0%)

f004750fd67372e90d63a83f2694d611

国民性に関して・・

“豊かさを満喫するオーストラリア人は、明るくて親切であり、とても開放的な国民性をもっている。 ” (0%)

800142-australia-day-puzzle-3

といった前段から・・

” 移民(=労働者)を受け入れることが宿命とされてきた。植民地時代のオーストラリアはきわめて小さな社会であいr、

多数の移民を受け入れることで、ようやく社会を成立させていくことができたのである。” (1%)

” 国際社会で見る限り、オーストラリアはベンチャー型の中企業国家である。専門的な知識や技術を駆使して、

未開拓の分野で研究開発を進める企業を「ベンチャー・ビジネス」と呼ぶが、

国際社会でこれを実践しているのがオーストラリアである。

アジア太平洋経済協力会議(APEC)構想を実現させ、カンボジア和平プロセスでは国連主導の和平案を提出して、

カンボジアを和平に導いた実績をもつ。農業貿易の自由化を叫んだケアンズ・グループの結成も、国際的圧力集団として無視できない勢力となった。” (1%)

australia1

オーストラリアを紐解く、ミドルパワーに込められた意味

この本ではオーストラリアをミドルパワーと称して、キーワードとなっていますが、

” 国際社会における政治力、軍事力、経済力の点で、オーストラリアは大国と小国の中間に位置するとの発想から、

ミドルパワー、中進国、中規模国家として自画像を描くようになった。

ミドルパワー論は、一九七〇年代前半のウィットラム労働党政権時代に模索されたものであり、

八〇年代から九〇年代前半を支配したホーク=キーティング労働党政権時代に、

オーストラリア外交を形容する言葉として定着するまでになった。” (13%)

” ミドルパワーの発想は、人口規模や軍事力で見る限り大きな国ではないが、経済的にはきわめて豊かで教育レベルも高く、

紛れもない先進国であるとの事実から、国際社会においてどのような役割を演じることができるのか、という問題意識から出発している。

つまり知力と経済力はあるにせよ、総合的な国力が十分ではないとの限界を前に、紡ぎ出された国家構想であった。

大国や小国が手掛けたくない国際問題、さらにこうした国々が対応できな外交問題に、積極的に参加するとの外交政策に結びついていく。” (15%)

” 世界でいかに影響力を行使できるかが、オーストラリア国家にとっての永遠のテーマである。” (84%)

Global-Leadership-World-Blog-620x310

南の端か、扇の要か

本の中では既述のオーストラリアが採用している国家戦略から、タイトル通り、歴史についても国家成立から丁寧に言及されています。

英連邦に所属し、白人による移民国家が形成されていったものの、アジアの南端といった地勢条件から、

” オーストラリアが安全保障政策で、イギリスと英帝国に決別を告げたのは一九四二年二月である。” (60%)

など、白人社会に代表される西洋型国家からアジア・コミュニティの中での共存を模索していく、苦悩であったり、大胆さであったり。

特に日本との関係が微妙な時期を経て、今は捕鯨問題など一部で価値観の相違はあるものの

トニー・アボット首相をして「アジアの中で最良の友人」との位置付けが成され、

とかくマスメディアの報道では日米関係、日中関係に比重が置かれ、

日豪関係に関しては受動的な姿勢では殆ど報道に触れる機会はありませんが

在留邦人数の数を上から順に並べると、アメリカ、中国の次に、オーストラリアが来るそうで、

冒頭にある通り、動物にイメージを強く引かれがちですが、如何に国際社会の中で存在感を発揮していけるか。

日本と絡んだ部分も興味深かったですが、マーケティング発想でページを読み進めていく視点でも、また興味深かったです。

 


Comments

comments