『日本社会を「逃れる」オーストラリアへのライフスタイル移住』読書中間記

読み進めている『日本社会を「逃れる」オーストラリアへのライフスタイル移住』の六章あるうちの

第三章まで読み終えたので、その部分のまとめ。

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アカデミックな斬り口ならではの読み難さと、方や感じる確かさ

編者に関西学院大学研究叢書154編とあるだけに、特に序章での大学の教材として使われそうな、文のアカデミックさに

立ち読み無しの「取寄せ」で入手した経緯から「(買っちゃって)失敗したかな、、」なんて笑顔を凍りつかせながらも ーー;

本編(第一章)に入ってフィールドワークからの部分は読みやすくなり、「ほっ」と一息(笑)

統計からの引用が散見され、そこから組み立てられるロジックにこの手合いの文献ならではの安心感があり、

例えば・・

” オーストラリアに居住する日本人数(永住者・長期滞在者の合計)は、一九八〇年には約五千人だったが、一九九〇年には約一万五千人、

一九九六年には約二万六千人、二〇〇五年には約五万三千人にまで増加し、二〇一二年現在、七万一千人まで増加している。 ・・中略・・

二〇一〇年の時点でオーストラリアに居住する日本人永住者の六四パーセント、日本人長期滞在者の六四・三パーセントは、女性が占めている。” (p.53)

” 一九八〇年に約四万九千人であったオーストラリアへの日本人観光客数は、一九八九年には約三十五万人を記録した。

日本人観光客数は一九九〇年代も日本社会の経済の低迷にも関わらず増加し、円高と航空運賃の低価格化を背景として一九九六年には八十万人を突破した。

それ以降、二〇〇四年には約七一万人を記録した後、二〇一〇年に三十四万人にまで減少したものの、

依然として日本人観光客数はニュージーランド、イギリス、アメリカ、中国に次ぐ数にて推移し、

オーストラリアの観光業界にとって重要な顧客となっている。日本人観光客の内訳の特徴として、

オーストラリアは特に若い女性の間で人気があり、二十歳代の女性が観光客の六〇パーセント以上を占め、新婚旅行先としても人気を集めている。” (p.56)

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そして、日本からオーストラリアへ移り住む人たちの傾向について・・

” 戦前の移民が、経済的動機や要因によって移住先に骨を埋める覚悟で故郷を後にしていたのに対し、

現代の移民は、必ずしも移住を行う「経済的必要性・必然性」を有しておらず、理想のライフスタイルを享受する手段として移住を行っている。

このような傾向は一九九〇年代以降の日本社会の社会構造の変化とそれに伴うライフスタイル価値観の変化によって顕著に見られるようになった。” (p64)

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また、移住先として注目を集めている傾向に・・

” 外務省(一九九三、二〇〇一、二〇〇六)によると、海外在留日本人数は、一九九〇年代を通して増加し、

一九九二年の時点で約六十八万人だったが、二〇〇〇年には約八十一万人にまで増加し、

二〇〇五年には一〇一万人を突破した。二〇〇〇年の時点で海外在留邦人の約五六パーセントは「ビジネス駐在員およびその家族」だが、

それに次ぐ高い比率だった項目は「学生、研究者、教師」であり、二五パーセントを占めていた(外務省 二〇〇一)。

海外在留邦人数の伸びが九〇年代に最も顕著な地域は、オセアニアだった。

一九九二年の時点でオセアニアに在住していた日本人数は約二万七千七百人だったが、二〇〇〇年には約五万一九〇〇人にまで増加した。

この数値の上昇は、一九九二年から二〇〇〇年のわずか八年間で八七パーセントの伸びを記録したことになり、

同時期の北アメリカ地域の伸びが一八パーセントだった点と比較しても急激な上昇だったことが分かる。(外務省   一九九三、二〇〇一)。”

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オーストラリアへ移住が進んだ背景には、日本の社会環境の変化があり・・

” 一九九〇年に月平均十六時間だった残業時間は、一九九四年に十一時間にまで減少している。

これらの「公式な」データは、いわゆるサービス残業を含んでおらず、この期間に実際に労働時間や残業時間が減少しているかは不明である。

しかし、多くの中小企業において労働環境が悪化した点は、柚木(二〇〇六)や清山(二〇〇三)らの研究で明らかにされている。

今回のオーストラリアに移住した日本人の研究の被調査者の中にも、不況期の勤務先の労働環境の悪化を経験した方が多い。” (p.74)

別の統計では・・

” 年間労働時間も統計上は減少し、二〇〇一年には年間の実質労働時間数は一九四八時間(うち時間外労働一五一時間)と、

統計上はアメリカ合衆国の一九八六時間(時間外労働二三九時間)、ドイツの一九〇二時間(時間外労働一五一時間)とさほど変わらないレベルにまで減少した。

しかし、実際は統計では表れないグレーな領域であるサービス残業は日本企業で常態化し、企業で働く個人にとって時間的・精神的負担となっているケースが多い。 ・・中略・・

日本でフルタイム労働の経験があるインタビュイーの約三四パーセントが、長時間労働を退職の主な理由もしくは理由の一つとして挙げた。” (p.98-99)

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統計から感じる身近さ

大雑把に上記の内容で、本では日本人から見たオーストラリアでのライフスタイルの印象、考察などが掘り下げられて言及されています。

どの国のライフスタイルが合う合わないは、個人差が大きく分かれるところと思いますが

オーストラリアを含むオセアニアで移住者が急増しているバックグランドは、

地理的な側面であったり、西洋とアジアが共存して成り立っているオーストラリアの上手いポジショニングかなと

感覚的に捉えていましたが、本書で統計を通じて抑えらえ、読み応えを感じるところでした。

 


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