野村克也さんに学ぶ、人間学に基づく「本当の才能」の引き出し方:『野村の真髄 「本当の才能」の引き出し方』読了

野村克也さんの『野村の真髄「本当の才能」の引き出し方』を読了.-

野村克也さんという呼び方より、野村監督(南海ホークス、ヤクルト・スワローズほか)の方が多くの方にとって座りが良いであろうと思いますが、

ということは一旦置いといて、先日、開催されたサイン会での対象書籍であったことから手元にきた一冊。

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平日の夜間、店外に長い列が出来るほどのさすがの人気ぶり。

野村さんの著作は数多いと思いますが、数冊程度読んだように記憶。

野球から紐解かれた、普遍の原理原則

本書が刊行された経緯は、野村さんのもとに「元気のない日本経済の再生につながるヒントが欲しい」

「成果を出せないビジネスマンを再生する手法をうかがいたい」といった要望が寄せられてのこと。

それは恐れ多いとしながら

” 本書は基本的に野球の話しか出てこない。あくまで選手として、監督として、「人間の才能を引き出すには、いかにすればいいのか」を私自身の経験に即してお伝えするものだ。

ただし、そこには普遍的な人間学に通じる、人の思考や組織の行動を左右する力強い「原理原則」が含まれている、とも考えている。”(p4)

プロローグで総括的な内容に言及があり・・

” 野球というフィールドの外でも十分に活用できる、人が誰しも持つ潜在的な力を引き出すためのヒントを見つけられると感じているからだ。

結論から言うと、それは「見えないものを感じる力」である。”(p5)

プロ野球の世界に、皆、それなりの体力と技術を持っていながら一流とそれ以外に分けられてしまうのは・・

” 「見えないものを感じる力」を養えないまま、体力と技術、そして気力だけで勝負に向かっている者がほとんどだからである。”(p5)

それでは「見えないものを感じる力」とは何か?

” 一般的には「洞察力」と言う。一流と呼ばれる選手は、間違いなくこの洞察力に長けている。

裏を返せば、体力と技術、そこに洞察力を絡み合わせることができて初めて、野球人は一流となるのである。”(p6)

一般社会に当てはめると・・

” 部下が何を求め、何を成し遂げたいと思っているか。見えないそれをおもんぱかり、ふさわしい声かけができる者が、優れた上司となるのだろう。

お客がどんな商品やサービスを求めているかを読み取り、ふさわしいものを提供できれば、どんなビジネスでも成功するに違いない。

若い頃は力と技術だけで押し切れた者も、いつしか壁にぶち当たる。洞察力をたくみに使い、とことんまで頭で考えなければ、その先はない。

相手の気持ちをしっかり理解できなければ、必ずどこかで頭打ちとなる。

私が数々のチームを、人を、再生してきたと言うなら、その洞察力を養うための後押しをしてきただけである。”(p5)

そして・・

” では、どうすれば見えないものを感じる洞察力を磨けるのか。「すべてを使う」ことである。

目で見る、耳で聞く、鼻で嗅ぐ、舌などで感じ取る、肌で触れる ー 。

五感と呼べる人間の感覚のおおよそすべて研ぎ澄まして、意識して使い切るのだ。

優れた洞察力は、優れた観察と、可能な限り蓄積されたデータの分析の上に成り立つからだ。”(p7-8)

といった前提のもと、本編では野村克也さんの選手時代、如何にしてテスト生から這い上がって

プロ野球史に数々の記録を残す一流選手に上り詰めたのか。また、監督として配下のくすぶっていた選手の才能であったり、

一旦、輝きを失った選手を再生させたか、その長きにわたる経験に基づいたストーリーが綴られています。

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書店2階に設けられた会場(開演前)の様子。イベント時の撮影は禁止。

人間の本質に触れる野村語録

印象の本書の中から残った箇所を下記に引用すると・・、

” 欲を持ち、準備のために観察をしたあとに来るのが最終段階。『仮説を立てる』だ。” (p28)

” くすぶっている選手は、必ず自らが作った「限界」という殻に閉じこもっているものだ。”(p33)

” 自信を持たぬ人間は、打たれ弱いのだ。”(p34)

” 「執念」を持って聞くこと、質問することは次の扉を開くことになる。恥ずかしい、聞くのがヘタだから怖い、などと言っているうちに、その扉は固く閉ざされて二度と開かなくなるかもしれない。→  うまくいかないときこそ、「耳を大きく」せよ”(p67)

” 人の力を借りられない人間というのは、「自分は誰かに支えられている」という自覚がないのかもしれない。”(p80)

” 「こうなりたい」「こうしたい」そんな執念があれば、見て、考えて、何かが得られるわけだ。”(p90)

” 最後の最後に「これで行く!」と決める「決断」の作業に必要なのは、「何があっても責任は自分が取る!」「失敗してもかまわない!」と腹を決められるかどうか。これが「覚悟」である。”(p94)

” 緊張やプレッシャーを感じるような心理の根っこには「欲」があるのだ。考え過ぎて緊張するのは、「勝ちたい」「成功したい」という欲求が強いからだ。”(p124)

” 「根拠は?」「とは?」と言い続けるうちに必ず思考が変わり、行動が変わり、自分自身を向上させてくれるはずだ。”(p144)

” 私はリーダーに必要な条件とは、「この人についていこう!」と思わせる「信頼」があるかどうかに尽きる、と考えている。”(p149)

” 「思考」と「行動」もまたつながっている。ならば、「行動」から変えてみればいい。こまやかで丁寧な仕事を続ければ、激情に心を惑わされることもなくなる。

常に平常心を持って、集中してやるべきことをやろう、という思考も根づく。丁寧に、丁寧に、目の前の仕事を続けるうちに、結果は自ずとついてくるのである。 → 「丁寧な仕事」を続けた者だけが本当の才能を発揮できる”(p180)

” 努力は裏切らない。よく聞く言葉だが、それは「正しい努力」であることが絶対条件だ。間違った努力を続けても力は伸びない。結果は出せない。

私がこの本で伝えたかったのは、そんな「正しい努力」のやりようである。自分の力を伸ばしたいと思うなら、正しい努力を続けることだ。

目を、耳を、足を、鼻を、そして頭をどう使うのか ー。

常に正しく考えて、考えて、考え抜いて日々を歩んでいけば、ある日突然、以前とは違う景色が見えるときが、必ずくる。”(p183-184)

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経験談から抽出された人を惹きつける言葉

本では各箇所で引用した句に付随する背景の説明が成されているので、

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サイン会で頂いたもの。100人限定で順番は80〜90番目あたりでお疲れの頃であったと思いますが、印刷か?と見間違うほどの筆ペンを用いての見事な達筆。

それぞれで、その意味する内容にご興味持たれた方々にとっては、人間の本質に触れる学びを得られる一冊と思料します。

 


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