菅付雅信さんに導かれる、モノが買われなくなった時代の未来:『物欲なき世界』読了

前々回↓中間記をアップロードした『物欲なき世界』を読了。

<< 2017年7月5日投稿:画像は投稿にリンク >> 菅付雅信さんに導かれる、モノが買われなくなった時代の未来:『物欲なき世界』中間記

中、後半は

4   共有を前提とした社会の到来

5  幸福はお金で買えるか?

6  資本主義の先にある幸福へ

という章立てで、「5 幸福はお金で買えるか?」で は・・

お金の本質、資本主義の着地点、そして目指すべきところ

” 人に渡せる信用という目に見えない力こそがマネーであると彼(註 経済学者フェリックス・マーティン)は定義する。なにやら神秘主義のようにも聞こえなくないが、

自然科学が目に見えない力を解明するのと同じように、経済学の本質も経済の目に見えない力を解き明かすものと考えれば、この信用という”見えないものをどう扱うかがマネーを科学することと言えるだろう。”(p173-174)

” お金のことを考えるときに大切なのは、お金から新たな価値をつくり出す方法などではなく、

お金というものをどう感じて理解して、関係性を築いていくかということです。

貨幣がビット化して、すべてがオンラインで処理されていく流れのなかで、お金を巡る人と人との関係の中に新しいテクノロジーが導入されたとき、

お金の持つ価値には人の感情がこれまでよりもダイレクトに、そして一瞬で反映されるようになるはずです。”(p186)

といった貨幣論に、

「6  先進国のゼロ成長が意味するもの」では著書が世界的に注目されたトマ・ピケティの考察を引用して

” 先進国は、全体としての経済成長がないため、国内において富める者と富めない者の格差を拡大させることで、資本家が利潤を出そうとしているということだ。”(p218)

フランスの学者 セルジュ・ラトゥーシュの見解

” 「私が成長に反対するのは、いくら経済が成長しても人々を幸せにしないからだ。成長のために成長が目的化され、無駄な消費が強いられている。

資本主義はもっと節約すべきだし、人々はもっと豊かに生きられる。我々の目指すのは、つつましい、しかも幸福な社会だ」。”(p226)

が示されるなど、その道の権威、学者等の登場により、文面、理解にアカデミックな様相を強く感じるようになります。

結論的なことは、

” 低成長下、さらには定住型社会に向かう中で、シェアやレンタルが当たり前の「物欲なき世界」に突入し、

買い物リストを埋めることに積極的な意味を持たなくなると、幸福のあり方が変わらざるを得ない。

そこにおいて幸福は、より個人的で、かつ普遍的な価値を共有出来るものに向かう。

つまり個人の思想・心情が強く含まれているが、他者とも価値観を共有出来る「いい物語を持った人生」が最大の幸福になるだろう。”(p243)

という一文の中に見出しました。

おぼろげに見えた、ような 未来のしっぽ

最近出た本かと思いきや、初版は2015年11月で、時折、遡ったかの感の記述も見られますが、

本筋のところに影響はなく、難解なところがありながらも、読了までいいペースで読み込んでいくことができました。

” 人に渡せる信用という目に見えない力こそがマネーである “

の指摘などは岡田斗司夫さんの主張、時代認識と重なるところでもあり、

「多分、そうなんだろうなぁ」とか、実感にまでは至らずとも、本書の中で蓋然性の高い未来が描かれていたように感じ、紹介されていた文献などで、より理解を深めたいと思いました。

 


Comments

comments