オーストラリアを日豪関係に40年以上携わる田中豊裕さんに学ぶ一冊「深まるアメリカとの関係」:『豪州読本:オーストラリアをまるごと読む』おさらい ㉒

『豪州読本:オーストラリアをまるごと読む』のおさらい編、第22弾.-

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<< 2015年1月6日投稿:画像は記事にリンク >> オーストラリアを日豪関係に40年以上携わる田中豊裕さんに学ぶ一冊「加速しているアジア化」:『豪州読本:オーストラリアをまるごと読む』おさらい ㉑

第九章の中の「アメリカの影響」からの抜粋です。

イギリスとの蜜月時代

”  第二次世界大戦までは経済、政治、防衛などの伝統的なつながりで、イギリスとの関係がオーストラリアの外交、防衛政策の基本であった。

アメリカは母国イギリスと戦争までして独立を獲得した。オーストラリアは、宗主国イギリスから独自の植民地政府、統治が認められた国である。

オーストラリアは、イギリス本土から大変遠いにもかかわらず、初期の植民地時代から、オーストラリア産品の主たる輸出市場としてイギリスに依存し、

また、近隣諸国からの防衛のため、強力なイギリス海軍の力を必要とした。この関係が、第二次世界大戦まで続く。

イギリスが直面した戦争、地域紛争、内戦などでイギリスに加勢するために軍隊の派遣もしてきた。

オーストラリアの背景がイギリス、アイルランドからの移民で成り立つ社会であるので、あらゆる分野でイギリスの影響が顕著であった。

その衣食住、文化、法律、政治、経済すべてにイギリスが深く、広く存在していた。”(No.4100、4108/数値は電子書籍のページ数、以下同様)

宗主国イギリスからアメリカ傘下へ

” 1962年イギリスがEEC(今日のEU、ヨーロッパ連合)に加盟申請した。このことは、オーストラリアにとってイギリスがもはやそれまでの最恵国でなくなることを意味した。

また、それまでにイギリスがその軍事力をスエズ以東から撤退したことが、イギリスに対する信頼を覆していた。

もはやイギリスの軍事力に頼ることができないという危機感が焦りを生じさせた。

そしてアジアでのアメリカの進出を大きく期待することになる。

その結果、第二次世界大戦以降はアメリカがイギリスに取って代わり、オーストラリアを防衛するということになった。

アメリカの世界戦略、特にアジアにおける戦略において、オーストラリアはアメリカに追従することになる。

さらには最近、アメリカと自由貿易協定を締結したことで、オーストラリアの商品やサービスが、巨大なアメリカという市場に強いアクセスを持てるようになった。”(No.4108-4135)

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進むアメリカンナイズ

” アメリカの影響は、外交、防衛、経済に限らず、文化や生活の中にも顕著に現れている。オーストラリア社会に対するアメリカの影響は甚大なものがある。

それまでの平等、公正、同胞意識がアメリカの個人主義、競争原理、階級意識、金権主義などによって大きく影響を受け、オーストラリア社会も変化してきた。

見る物、聞く物、食べる物、着る物、すべてにアメリカの影響が強い。オーストラリアで放映されているテレビ映画の大半がアメリカ物であり、テレビ番組もアメリカからの直輸入が多い。

オーストラリアで製作するより安く輸入されている。

オーストラリア政府の映像産業育成、奨励策、税優遇、あるいは外国映画の規制枠などがなければ、オーストラリアの映像産業はその存在すらなかったであろう。

文学、音楽、芸術もアメリカ物が多い。オーストラリアの人気チャートの上位は、ほとんどアメリカのアーティストである。

テレビをよく見る青少年は最も影響を受けやすく、アメリカの青少年と同じにように考え、振る舞い、アメリカのライフスタイルを享受している。

コンピュータ時代、言葉にもアメリカ英語が氾濫している。ファッションにも国際化とはアメリカ化ということである。

オーストラリア国民は、精神的にもアメリカンナイズされている。

最近になってオーストラリアでもアメリカ発信の「loser」(負け犬)という言葉をよく耳にする。

いわゆる勝ち組、負け組の概念である。オーストラリアでは皆平等で、同胞で、互助の精神、価値観が社会の根底にあるので、この概念には嫌悪感を催す。

オーストラリアでは、「出る杭は打たれる」、大金を儲けても吹聴することなくあくまで謙虚で、

名声を得ても支配、権威欲を振りかざさないのが、国民感情である。

オーストラリアではアメリカに極端に依存する今の外交、防衛製作を嘆き、オーストラリアのアメリカ化を悲しむ有権者や年配者が多い。

しかし、オーストラリアの伝統的な価値観はまだまだ国民の中に根強く生きている。

この伝統的な価値観があるがゆえに、オーストラリア社会はアメリカ同様多民族多文化国家でありながら、アメリカより格差が少なく、弱者強者の意識が弱い。

階級意識、競争原理もそれほど強くない。多民族国家であってもうまくやっていける証である。

たとえば、社会生活の安定度を示す統計の一部を検証してみると、オーストラリアでのエイズ感染はアメリカの12分の1、

離婚率はアメリカの約半分、殺人は4分の1などでオーストラリア社会の方がアメリカ社会より安定しており、健全であることがわかる。”(No.4145-4189)

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異が許容される土壌

オーストラリアからイギリスも遠いですが、アメリカも西海岸の都市などに直行便の運行はあるものの距離が離れることは否めないながら

結びつきは記述の通りの密接さで、オーストラリア人のマインドに影響を与えるレベルまで来ている状況。

アメリカの影響は強いながら、内側から移民が築く文化もあり、前回のおさらいと重複しますが、多様なものが融合しているところがオーストラリアの特徴ですね。

第九章では先住民族のアボリジニーの項目が残されていますが、かなりの長尺で、フォーカスしたい内容とも異なることから、次回から最終の「第十章  日豪関係の歴史と将来」に移行します。

 


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