オーストラリアを日豪関係に40年以上携わる田中豊裕さんに学ぶ一冊「加速しているアジア化」:『豪州読本:オーストラリアをまるごと読む』おさらい ㉑

『豪州読本:オーストラリアをまるごと読む』のおさらい編、第21弾.-

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<< 2015年12月30日投稿:画像は記事にリンク >> オーストラリアを日豪関係に40年以上携わる田中豊裕さんに学ぶ一冊「多民族、多文化の光と影」:『豪州読本:オーストラリアをまるごと読む』おさらい ⑳

今回は「第九章  多民族、多文化国家」の続きで「オーストラリアのアジア化」(要旨抜粋)です。

確立されている深いアジアとの結びつき

” 輸出相手国のトップファイブは、上位から順に、中国、日本、韓国、インド、アメリカとなっている。

この中で4ヵ国がアジアで、全部環太平洋圏の国である。そして約30兆円にならんとするオーストラリアの輸出総額の60%を超える。

輸入相手国の上位5ヵ国も見てみると、アメリカ、中国、日本、ドイツ、シンガポールとなっている。

このうち3ヵ国がアジアで、ドイツを除くと全部環太平洋圏にある国である。

オーストラリアの経済関係は、明らかにアジア、環太平洋圏に主体がある。

さらにアジアからは約200万人の観光客が、毎年オーストラリアを訪れている。これは全体の約40%である。また同じ数のオーストラリア人がアジアを訪れている。

さらには、オーストラリアで勉強している留学生の10人に7人はアジア人である。

毎年受け入れている移民の半数以上がアジアからである。このようにオーストラリアの将来は、アジア抜きでは語れない。”(No.3879、No.3881/数値は電子書籍のページ数、以下同様。)

ヨーロピアンからアジアンへ

” 白豪主義が政党の指針から削除されたころには、アジア人の居住者は、5万人(全人口の1%以下)に満たなかった。

それが、政府の移民政策の緩和でアジア人が急増し、1990年の中ごろには約160万人になり、20世紀の終わりにはオーストラリアで生活するアジア人が全人口の10%、つまり200万人を超えることになった。

実際、最近10年間の移民統計を見ても、アジアからの移民が、イギリスを主体にしたヨーロッパからの移民を大幅に超えている。

この傾向は今後とも顕著になり、単純に予測をすると2025年頃にはオーストラリアの人口にアジア人の占める割合が20%近くになり、

21世紀の終わりにはその割合が70%近くになるという。”(No.3890、3899)

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この流れは不可避とみられ、著者の田中豊裕さんは・・

” 仮に、将来オーストラリアが近隣のアジアの国との間に摩擦が生じ、紛争などが生じたとき、

そのアジア出身のオーストラリア人は、オーストラリア人として行動がとれるであろうか。

200ヵ国以上から移民を受け入れている国としてこのような問題が将来発生する可能性が大きい。”(No.3916)

と指摘。これだけの短期間で他国で多民族化が進んだ事例がないことから、オーストラリア固有の問題として国の将来が試されることになるでしょう。

なお、本文に出てきた「白豪主義」とは、第二次世界対戦までオーストラリアが、基本的にヨーロッパ民族に国であったところ、

非ヨーロッパ人の移民により、オーストラリア人労働者の職が奪われることや労働条件の悪化を恐れ、非ヨーロッパ人の移民を排除するために行われていた厳格な移民政策のことです。

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文化の融合、独自文化の発展

なお、急速な移民受け入れは、南ヨーロッパ(イタリア、ギリシャ、マルタ、モナコ、トルコなど)からは

新たな食文化(ex. カプチーノを飲む。ワインを楽しむ。日常的にスパゲッティを食べる。)、ファッション、芸術などがオーストラリアに持ち込まれ、

それまでのオーストラリア文化の中に融合し、社会生活を豊かにした面もあり、光と影の部分が存在する事も指摘されています。

また、多民族国家として発展を遂げているヨーロッパ、中近東、中国などで、長い紛争、内乱、戦争が起きているのに対して、

オーストラリアの発展は対照的で、世界的にみて独特な点も注目されているようです。

本文では

” オーストラリアの全人口の約25%が外国生まれである。この割合はスイスの18%、カナダの17.4%、アメリカの10%と比べて高い。

しかし、オーストラリアの社会は大きな混乱もなく、もともと移民によって造られた国、社会であるので、

歴史的に肌の色、宗教の違い、文化や言葉の違いなどに慣れており、

いまだに人種偏見、差別など根強い問題が露出し、暴動や社会問題になっているアメリカ社会などとは違い、平和な国である。”( No.4070)

と、著者の田中豊裕さんは表現されています(なお、人種問題、暴動がまったくなかったわけではない点も併記されています)。

今回は、ここまでとして、次回は第九章の「アメリカの影響」から続けます。

 


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